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SSシリーズ欧州型 蒸気機関車

弁装置(U)

加減リンクは機関車の速度を変えたり進行方向を逆転させる機能をもっています。組立調整はバルブチェストを開けてバルブの作動と一致させます。

加減リンクの働き

(1) ピストンとバルブの位相差

ピストンにはたらく蒸気圧が最も効率よく主動輪に伝えられている状態は,ピストンとバルブ,動輪が下図の様になるときです。
バルブは右隅の折り返し点に達し蒸気ポートは全開,ピストンはシリンダー中央部を最速で運動しています。

この状態はバルブの位相をピストンの位相よりも90°先行させたときに生じるものであり,偏心棒のクランクピンA を主連棒のクランクピンB よりも90°先行させた位置に保ったまま回転させています。
 リターンクランクを取り付けることによって主連棒のクランクピンの位相よりも偏心棒の位相を90°先行させる構造になっています。(=AはBよりも90°前を回転しています)

(2) 速度(出力)の制御
蒸気機関車の速度(出力)はシリンダーに供給する蒸気量によって決まります。この蒸気量を変える方法は加減弁
75の開−閉によってボイラーからの供給量を変えてしまう方法と加減リンク35によって蒸気ポートの開口部を大−小変化させて変える方法があります。

下図は加減リンクによってバルブを開閉する機構を抜き出して描いたものです。図の様に動輪の回転運動Aが偏心棒を通して往復運動Bに変えられ,加減リンク(= 「梃子の腕の長さ」を変える働きをしています)によって,より小さな振幅の往復運動Cに変えられます。

いま,吊りリンクによって心向棒を引き上げていきますと,てこ(加減リンク)の腕の長さが変わりCの振幅が減少します。
付随してバルブの往復運動Dの振幅も減少するので蒸気ポートの開口部が全開することは無くなり出力は逓減します。さらに,回転軸の位置まで引き上げると心向棒は往復運動を止め,合併てこのみがわずかに動くだけなので蒸気ポートは開閉せずエンジンは停止します。
図の往復運動
Dは合併てこのはたらきが加味されるので,Cの運動とは若干異なります。

 

(3) エンジンの逆回転

機関車を前進,後退させる(エンジンを逆転させる)方法は走っている機関車の左,右の主動輪を側面から見た絵を並べて描いてみると分かります。(右図)

絵では機関車の右側車輪は右方向に,左側車輪は左方向に進行している状態が描かれています。
言い換えると車輪が右回転するのが前進ならば,左側車輪は左回転し後退していることになります。(座標軸が右手系と左手系の絵を同じ平面に並べているので見る向きによって前進・後退の絵になっているだけのことですが・・・。)

---この絵から分かる車輪を逆回転させる方法とは次の様になります。---

車輪の回転する向きは偏心棒のクランクピンAと主連棒のクランクピンBの位置関係で決まり,車輪はピンAがピンBに対して90°先行する向きに回ります。下記注
 クランクピンBの位置を基準の0°と し,Aを反時計回り90°に保持したときには左回り反時計回り270°(=時計回りでは90°)に保持すれば右回りになります。

---逆転させる方法が分かれば,実際に加減リンクによって逆転が可能になる理由を考えてみます。---

下図のように,心向棒を加減リンクの回転軸の上方まで引き上げますと,それまで加減リンクに加えられた往復運動の位相は反転(角度で180°変化)して心向棒に作用することになります。
これはリターンクランクのピンの位置90°から270°(または90°の位置に 付け替えたことに相当します。すなわち,リターンクランクを取り外して取り付け角度を変える必要もなくエンジンは逆回転を始めることになります。

 

(4) 加減リンクと偏心棒

バルブチェスト内のスライドバルブは外から見えませんが,左右に首を振る加減リンクは心向棒を介してバルブに接続しており,加減リンクの動きからバルブの動きを知ることが出来ます。合併梃子の運動もバルブに加えられますから完全に同一ではありませんが,ほとんど同じような運動をしています。

この加減リンクの首振り運動を行なっているのは偏心棒であり,偏心棒と加減リンクとは一体のものとしてエンジンの性能を大きく左右しています。

スライドバルブの開閉が適正に行なわれるためには加減リンクと偏心棒がどのような関係で動けばよいのか考えてみました。

(1)加減リンクが直立した位置(右図の状態)を基準位置と呼ぶことにします。

(2)加減リンクは動輪の回転に合わせて基準位置の左右に均等に(=等しい振幅で)動くことが必要です。

(3)上記(2)の状態は偏心棒のクランクロッドがA1(最上点)およびA2(最下点)に達したとき,加減リンクが基準位置を通過する状態であれば実現されます。
図中の
B
1B2は主連棒のクランクロッドです。

(4)偏心棒を上記(3)の条件を満たす長さに設定(=製作および調整)すれば,最適な状態でスライドバルブの 開閉が行なわれます。

加減リンク の「基準位置」を見つけ出すのは困難に思われるかもしれませんが,実際は簡単です。バルブチェス トの蓋を開けて心向棒を上下させてみます。バルブが前後いずれにも動かなければ,そのときの加減リンクの位置が「基準位置」です。心向棒の長さと加減リンクの弧の半径が一致していることによります。

偏心棒の長さの決定

偏心棒の長さは設計図上では決められていますが,様々な誤差(モーションプレート34や軸箱守7の取付誤差 までもが関係してきます。)が影響するので,他の部分がすべて完成後,最終的に現物合わせで製作偏心棒の製作しなければなりません。

その方法は長さ調節ができる「仮の偏心棒」を作り,車輪を回してバルブの開閉状態を見ながら最適な長さに絞り込んでいきます。
長さの絞込み方法は省略しますが,車輪を前進方向,後退方向に回転させたときバルブの開閉が同じ状態であればリターンクランクの取付け角度も適正で,「仮の偏心棒」も最適な長さになっています。

(左写真)約三十年前に作った「仮の偏心棒A」・・・ ねじを緩めると真鍮棒の長さが変えられます。偏心棒を作るときの穴あけジグには利用できませんが形は偏心棒そのものです。
(右写真)今回,「生きた蒸気機関車を作ろう」を読んで作った「仮の偏心棒B」・・・片側2本のねじの裏側は長穴になっていて長さが変えられます。ジグにも使え,このままでも走れそうです。

 

加減リンクの操作1

運転室から加減リンクを操作する逆転器です。 材料の真鍮鋳物を加工し,蒸気ポートを全開,約75%,約40%開く位置にノッチの切込みを入れました。
(右写真)逆転機の部品
機関車の前進/後退で出力(=蒸気ポートの開き方)の条件を変えてみようかと思いましたが,小型機関車では常に限度一杯の走行ではないかと考え,前進/後進 とも切り込み位置は変えずに対称としました。

50 逆転機   51 逆転棒

逆転棒はタンクの下を通すために途中で曲げています。強度を考慮して径4mmの真鍮棒にしました。

(左写真,下写真)逆転棒51の両端に長さ調節が可能な取付金具を作り,逆転機50のレバーとリバースアーム43をつないでいます。

 

余談1 模型機関車の弁装置はラップやトラベル,リードなど も考慮して弁線図等で総合的に設計されています。それらの図を見ながら構造を理解して少しでも性能が向上するように,各部の関係をあれこれ自己流に解釈して作りました。その中から加減リンクによる速度調節と逆転する理由,加減リンクの調整について記してみました。
図から読み取ったことを解釈して私の考えた筋道で書いたので,もっと簡潔明快な説明の仕方があるのかもしれません。

余談2 上記,「仮の偏心棒B」を作って最適な偏心棒の長さを測定したところ,右側偏心棒は122.1mm左側は121.7mmとなりました。設計値では121.5mmなので,設計値そのままでも許容範囲かもしれませんが,「仮の偏心棒B」をジグに して製作すれば完璧です。(注:製作には直接関係しませんが,加減リンクのバックセットは4mmの設計です。)

 

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