そばな高原鉄道車輌の製作 連結器 (表示中)    急行 home  行き↓

  そばな高原鉄道/標準連結器  設   計

 設計の前に/ 牽引力の伝わり方

連結器の設計はそばな高原鉄道の列車編成の方式(異なるゲージの車輌や高さの異なる車輌を一編成として連結する。)に合わせて実物の模型化でなく実用本位にします。

まず,この変則的な列車編成にした場合連結器を伝わる力がどの様になるか考えてみました。

● 様々なタイプの台車を試作中なので,どの車輌も床板の高さ(連結器の取り付け高さ)が異なります。(図1参照)

そのため連結器を取り付けている支点A,Bは鉛直方向にずれがあり,有効な牽引力F1とは別に車輌を浮き上がらせる(または沈み込ませる)不都合な力Fy も生じます。

● 3線式の併用軌道上で89mm(3インチ半)ゲージと127mm(5インチ )ゲージの車輌を連結する場合,車体の中心線が一致せず19mm(=[127-89]÷2)ずれます。直線区間でも連結器の向きとレールの向きが平行になることはありません。(図2参照)

支点A,Bの水平方向のずれのため,有効な牽引力はF1より更に小さなF2になります。通常,直線区間では車輪とレールとの間に横圧が作用しませんが,ゲージの異なる車輌の連結ではレールに横圧Fxを加えながら走行することになります。

● Fx,Fyはそばな高原鉄道の特殊な車輌編成による力で車輌の浮き上がり脱線などの原因になる力です。支点A,B間の距離を離すなど,出来るだけ軽減することも考えます。

● 連結器は車輌間で「押し」・「引き」の力を伝える役割と連結・切り離しをする役割があります。
この2つの役割を満足する構造にしなければなりませんが,どちらかというと連結する機構に目がいきます。実際は「押し」・「引き」の役割が主要で切り離 しの機構はそれに追加する形で設計することにしました。

設計の前に/ 「連結器は1本の棒」という考え方

「引き」の力を伝えるのは紐で十分です。ただ,機関車が牽引している筈と思っても「押し」の力が頻繁にはたらくので紐は使用できません。

基本的に「押し」の力を伝える機構の方が複雑になり,紐でもよい「引き」の機構は簡単です。「押し」に適した構造で作り「引き」も兼ねるようにします。

車輌間(支点A,B間)で「押し」,「引き」の力を伝える最も単純な構造は「1本の棒」です。(図3) 
ただ,この棒は中間で分割できないと「連結器」にはならないので,連結した状態にすると1本の棒(1つの剛体)とみなせる構造にします。

車輌の床下には機器もあり,支点A,B間に入れる1本の棒は(剛体であれば)直線的でなくても構いません。 図4の形でも同じように作用します。
この形なら低い位置で連結できるので床下に機器があったり,床板の高さが異なる車輌間でも連結が可能です。

見かけは床下に吊り下げられている形ですが連結によって一体化した剛体になれば支点A,B間にはたらく力は「一本の棒」と同等です。

(注)支点A,Bは状況に応じて「遊び」を大きくする必要があります。A,Bの構造によって自由度に制約が生じる場合,連結器部分を関節構造にせざるを得なくなり,連結状態が「1つの剛体」にならないこともあります。

 古典機の連結器

右写真はそばな高原鉄道の1号機関車の連結器です。

鉄道初期の代表的な連結器で現在の連結器とは違う考え方で車輌を牽引していたことが分かります。

特徴は連結する機構が端バリ(1号機関車の部品番号5253参照)全体に配置され,「引き」の力を伝えるネジ連結器(部品番号109参照)と「押し」の力を加えるバッファー(部品番号110参照)とに機能が二分されています。

現在,広く使われている「一本棒形連結器」(上記参照)では作用する力を外見から見分けることは出来ませんが,この型は連結器の2つの機能・・・「押し」,「引き」を別の機器で完全に分離しているところが原理的で面白いと思います。

ただ,ネジ連結器とバッファーの組合わせは模型鉄道の急カーブには対応しきれません。模型として見るだけで実際の使用には無理があります。模型に取り入れる方法としては左右のバッファーを連動させてカーブでは内軌側を引き,外軌側を押し出す公園のシーソーの様な機構を付ければよいと思います。

  標準連結器の設計

通常,連結器はレール面からの高さが決まっており,連結器の高さが違う車輌との連結は想定していません。

一方,そばな高原鉄道は異なるゲージの車輌と連結したり,自作車輌は連結器の高さを無理に揃えずに取付けやすい高さとしています。
そのため,設計する連結器は高さが異なっていても連結できる構造にします。また,特別な材料は使わず,手に入り易く,価格の安い材料で作れることも条件にしました。

上図が設計した連結器です。この連結器なら初めて見ても直ぐに連結や切り離しが出来る単純な構造です。

特徴として,「古典機の連結器」(上記)を踏襲して2つの機能を別の箇所で分担しています。また,連結すれば現在の連結器,「一本棒形連結器」(勝手につけた名称)でもあるので新旧のミックス型になっています。

●「引き」の力を伝える古典機のネジ連結器に相当するのが部品Eになります。
E
は2つの連結器をつなぐ板で,両端の孔に連結するそれぞれの連結器の部品Fを通して抜けないように固定します。

●「押し」の力を加える古典機のバッファーに相当するのが部品Aです。正面から見るとAが手を広げています。双方の連結器の接合面を広くすることで接合面での屈曲を減らし,連結状態を1本の棒(1つの剛体)に近付ける効果を高めています。

●連結器を取り付ける腕Dを通常よりもかなり長くしました。連結器の高さの違いや異ゲージ車輌との連結で生じる不適正な力(上記,Fx,Fy)を軽減する手段です。
また,角パイプをBCの2段重ねにしているのはEの高さの選択巾を拡げるためで,場合によっては3段にすることも考えられます。まだ,該当車輌は登場していませんが,BCの間や下にDを重ねるタイプも可能です。

  部品の寸法

連結器はホームセンターで購入できる範囲の材料で作ります。 限られた範囲の材料から可能な形を考えるのが「設計」です。部品間の整合性と材料の加工方法,組立順序も考えて1ヶ所づつ詰めていきます。使用できる材料が変わると,形も全く変わる「連結器の設計」です。

完成した形を想像しながらこの部品は全長を10mm長くしたらどうなるか・・・,ここを2mmずらすと・・・,「独創性」や「機能性」 もおろそかにしたくないし・・・設計は停滞したり,良いアイデアが浮かぶと一気に前進したりもします。自分で設計して自分で作るのは「ものづくり」の魅力にあふれています。

最終的には次のAF,7種類の部品で連結器を構成することにしました。(下図)

部品A1A2 アングルをカットして,左右対称のものを1個づつ作ります。

部品BC角パイプ2個を同じように加工します。違いは孔の直径とネジ穴にするかしないかです。Cの底面の6mm孔は此処から+ドライバーを差し込んでネジを廻すためのものです。

部品DE 材料はフラットバーです。Eは「引き」のみに対応させるので長穴にします。

部品F太さの違う3本の鉄棒を組合わせます。連結器から抜き差しする際に「持ち手」となる棒を横から通します。これを付けると機械的な機能を連想させ,全体のデザインが良くなると思います。

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