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 21  自動移線器 個性をもった鉄道を目指して<6>

(1)混合編成列車を走らせるには移線器の自動化が必要
そばな高原鉄道では89mm(3吋半)ゲージの機関車が127mm(5吋)ゲージの車輌を牽引 して走るなど,2種類のゲージの車輌を混成編成の列車として走らせます。

そのため移線器には127mmと89mmの車輌が時間をおかずに連続して通過することになり,これらの車輌の中から89mmの車輌を選別し,瞬時に”移線”させなければなりません。(転轍に要する時間 は注1を参照)



●手動によってトングレールを切り替えるとすると,その都度車輌を止めて行うことになり,連続走行のためには転轍操作は自動化されていなければなりません。
●トングレールを固定したA形移線器でもそれほど支障はありませんが,固定による欠線部は「鉄道」としては望ましくないので,欠線部を解消したこのB形移線器を考えてみました。

(2)自動化のヒントはスプリングポイント(分岐器)に

移線器は分岐器に似た構造なので自動化の手掛かりとしてスプリングポイントが先ず頭に浮かびました。
《背向》 の自動転轍

右図で,分岐器に車輌が背向(鉄道用語)から進入した場合,トングレールが自由に動ける状態 ならば車輪(フランジ)からの横圧でトングレールが「自動転轍」され,通過することが出来ます。

一方,対向(鉄道用語)からの進入では左右どちらかに転轍しますが,常に決まった方向に転轍するときはスプリングポイントにします。

スプリングのはたらきによって対向に対して常に正位(鉄道用語/トングレールが図の場合は左方分岐が正位)の方向に転轍し,反位(図では右方分岐)の方向へは自動では転轍しません。

分岐器と移線器とは異なる形をしていますが移線器にも分岐器の背向に相当する向き(=線路が合流する向き)があることが分かります。

したがって,この背向に相当する向きからの進入であれば,以下の様にして移線器の自動化が考えられます。

89mmの車輪の場合横圧でトングレールを移動させ,移線して通過する。
127mmの車輪そのまま通過 させる。(元々,127mmは移線器を必要としません。)

(3)対向でも鈍端トングレール分岐器なら自動化できる

背向からの自動転轍は簡単ですが,対向は車輌の進入前にトングレールを転轍する必要があり,機械的な方法で単純に行うのは困難と思いました。
しかし,問題を解決するヒントが鈍端トングレール分岐器にありました。
《対向》 の自動転轍

右図の鈍端トングレール分岐器は対向からの進入を左右2方向 のレールに振り分ける形をしています。

尖端トングレール分岐器と鈍端トングレール分岐器の違いはトングレールの形(▲形or■形)に 特徴がありますが,トングレールの動き方に本質的な違いがあります。自動化できるカギがこの違いにありました。

尖端トングレール  車輌の進入前にトングレールの転轍が完了している
鈍端トングレール  車輌の進行に合わせてトングレール の移動が可能

鈍端トングレール分岐器のこの特徴を利用すれば,前項(2)に記したスプリングポイントと同じ方法で,車輪(フランジ)からの横圧によってトングレールを「自動転轍」して通過させることが出来ます。

鈍端トングレール分岐器を移線器の形に置き換えて描いてみると右図の様になります。
対向から進入した車輌は移線器ですから2つの方向ではなく,2つのゲージ(89 mmと127 mm)に単純な機構で「分岐」させることが可能になります。

89mmの車輪の場合横圧でトングレールを移動させ,移線して通過する。
127mmの車輪そのまま通過させる。(元々,127mmは移線器を必要としません。)

(4)2つの回転軸をもつ平行レールによる自動化

対向と背向,それぞれを自動化 しますから,使用するトングレールは両端にヒンジ(関節構造,回転軸)があるという特殊な形になりま す。
右図の赤で描いた線はトングレール,O1は回転軸(ヒンジ)です。
対向
からの進入に対し,127mm車輌ではトングレールを図の定位置(正位)にしたままで通過させます。

89mm車輌では車輪(フランジ)にはたらく横圧を利用して力F1をレールに加え,89mm側(反位)へ移動 させます。通過後はバネの力で正位に復帰させます。(スプリングポイントと同じ動きになります。)

背向からの進入に 対する鈍端トングレールは赤レールと緑レールが
必要です。この平行レールの回転軸(ヒンジ)はO2です。

トングレールは正位(図の位置)に保持され,127mm車輌はこのままで通過します。89mm車輌は車輪(フランジ)から横圧(図のF2を緑のレールに加えて反位側に切り替えて通過します。レールは通過後バネの力で正位に復帰します。(トングレールが2本のスプリングポイントに相当します。)

トングレールは対向のときは1本で済みますが,背向には2本必要になるので赤と緑 のレールを平行に並べた形になります。
通常のトングレールはヒンジ部が固定された回転軸になっています。ここでは両端に回転軸O1,O2があるので一方を回転軸にするときは他方の軸は移動できる構造にしなければなりません。

(5)製作した自動移線器

対向と背向,いずれの向きからの進入に対してもスプリングポイントと似た機構で自動化した移線器です。この移線器を〈B形〉自動移線器と名付け,そばな高原鉄道に設置しています。
右図は上記の考えを基に製作したそばな高原鉄道〈B形〉自動移線器の概略図で す。

構造の説明 2本の平行・鈍端トングレールとその両端に回転軸(O1対向用,O2背向用)があります。この回転軸は平行トングレールが車輪(フランジ)から強い横圧を受けると一方の軸が固定回転軸となり,他方の回転軸は軸の機能を失い自由にスライドできる状態になります。

作動の説明 2本の引きバネと2ヶ所の移動止め金具で平行トングレールは図の状態(正位)に保たれています。

〔1〕 127mm車輌
この正位の状態が保持されているので移線器は作動しません。

2〕 89mm車輌
対向からの進入・・・輪軸(バックゲージ=83mm)がガードレールRGトングレールR2の間に入ると,O1を 回転軸にしてR2バックゲージの値83mmまでRGに引き寄せます。 付随して,輪軸を載せたR1のレールは89mmのレールに接続します。

背向からの進入・・・輪軸(軌間=89mm)はO2を回転軸としてトングレールR2を軌間の 値89mmまで押し開きながら進みますから,そのまま共用レールに接続されます。

(2013.2.記) 

1 移線器の作動時間(冲)

実車の速さが 60km/h (=10m/s) のとき,5インチゲージに換算した速さvは
  v=10÷8.4=1.2m/s  になります。

もし,3インチ半ゲージと5インチゲージの車輌を連結して上記 1.2m/sの速さで移線器を通過させると,連結器を挟んだ前後の車輌の車輪間隔は(7cm×2輌分=)14cm程度なので,3インチ半と5インチゲージの車輪が移線器を通過する時間間隔冲は
  冲=x/v=0.14÷1.2≒0.1s  となります。


移線器は0.1sに満たない瞬時にトングレールを動かし,転轍しなければならないことが解ります。 手動切り替えでこの操作をするとすれば1輌毎に列車を止めて行う必要があり,そばな高原鉄道の「混合編成」は事実上不可能です。

 

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