(1) バッテリーに蓄えられる電気量
「太陽光発電所」では日照の無い時間帯でも電力を供給できるようにバッテリーに電気を蓄えます。蓄える量は天候や季節的な条件で日毎の発電量が変化しますから,無・日射日(→
無日射でも若干は発電します。)が数日間続いてもシステムがダウンしないだけの量を確保しておく必要があります。
鉄道模型用の電力だけでなく,生活用に電力を融通し,備蓄は生活用の方が主になります。
生活用に電力を使用するシステムにすると雨天続き等で備蓄量が足りなくなった場合,補助的な手段として商用電力から充電器でバッテリーに充電する方法もとります。
これまで弱電流の電源としてバッテリー(鉛蓄電池)を使用したことはありますが,乾電池とは比較にならない電荷を蓄えているバッテリーでは余力が十分にあり放電量について気を配る必要がありませんでした。
今回は多量の電気を蓄える目的なので,頻繁に充電・放電を繰り返し性能限度ギリギリの過酷な使い方になります。
バッテリーについては予備知識を持ち合わせておらず,どのように使用すればよいのか調べることからはじめる必要がありました。
電荷を蓄える「容器」としてのバッテリーは一般的な保存「容器」とはかなり異なる点があるようです。それは蓄電している電荷を完全に使いきるとバッテリーの極板が劣化し機能が損なわれることです。
理想的な使い方としては,完全に充電された状態を保ちながら電荷を少量取り出し,取り出し分は速やかに再充電して元の状態に戻すことのようです。
自動車に積載されているバッテリーはこのような使い方になっています。エンジンによって発電機はいつでも回せる状態にあり,レギュレーターによって電圧が管理され適正な充電状態が維持されています。
バッテリーの特性から蓄電量の全量を取り出すことはせず,
バッテリーの蓄電量(蓄えている電荷の総量)≫放電量(出し入れする電気量)と
します。
いま,満充電されたバッテリーの電荷をQo,放電せずに残っている電荷をQとすると,放電量冫は 冫=Qo−Q となります。
したがって,バッテリー容量の決定はQoではなく,先に冫をいくらにするのか決め,逆算からQoを決めることになります。
ネットで調べてみると,太陽光発電に適しているのはディープサイクル・バッテリーと呼ばれるタイプのもので深放電に耐え,充放電できる電荷の量が多いことが分かりました。
ディープサイクル・バッテリーは容量に対して放電量冫を大きとれるといってもあくまでも鉛極板の電池ですから過放電は禁物で,満充電時の電荷Qoの20〜50%程度まで放電した段階で,その後は再充電に移行するようにすれば劣化が抑えられるようです。
上式の関係では,
放電後の電荷:Q=0.8Qo〜0.5Qo 放電量:冫=0.2Qo〜0.5Qo
となります。
日照が少なく最も悪条件の時に,Q=冫=0.5Qo となる様にバッテリー容量 Qo
を設定します。通常では冫〜0.2Qoで過放電(=深放電)になることもなく,価格の高いディープサイクルバッテリーの寿命を長く保つことが出来そうです。
バッテリーを電気を蓄える「容器」という点から特徴を模式図にしてみました。貯水,排出できる容器で,ディープサイクルバッテリーとスターターバッテリー(エンジン始動用)との比較もしてみました。「一夜漬け勉強」の浅い理解なので誤りがあるかも知れません。
一般の容器なら容量一杯に物を入れ,すべてを使いきることができます。バッテリーは充電されている電荷を完全に放電させると極板が劣化
するので必ず電荷Qを残し,冫の電荷を出し入れします。
自動車用バッテリーとディープサイクルバッテリーとの相違は,自動車用は(1)始動時に一瞬だけ大電流を流す。(2)放電可能な領域が少ない(水栓位置が高い)。(3)発電機で常時満充電状態に保てる。・・・等の条件下で使用します。ディープサイクルバッテリーは深放電に耐える(水栓位置が低い)のが特徴です。
放電量が多い太陽光発電に自動車用バッテリーを使うと劣化が早く進むことになります。
(2) バッテリー容量と容量の単位
これまでバッテリーは弱電流の定電圧電源としてのみ使っていたので,バッテリーの容量や容量の単位について知る必要もありませんでした。内部抵抗の小さな”巨大乾電池”という感覚です。
今回,太陽光発電で使用するとなるとバッテリーの大きさ(容量)が問題になり,容量の単位も調べる必要がでてきました。カタログをみると馴染みのない〔Ah アンペアアワー〕という単位が使われています。
1A(アンペア)は毎秒1C(クーロン
) の電荷が導線の断面を通過する状態なので,「次元」で考えると
電流×時間=電気量の関係より 1〔Ah〕=1〔C/s〕×602〔s〕=3600〔C〕の電荷になります。
〔Ah〕ではピンときませんが,電荷の単位〔C〕なら電気を入れる「容器」の大きさの単位として納得できます。
(その1)単位の「次元」からバッテリーの容量とはバッテリーに蓄えられる電気量に関係する量であることが分かりました。
コンデンサーの電気容量は〔Fファラッド〕=〔C/Vクーロン/ボルト〕となるので
実際に蓄えられる電気量は電圧によって変わります。バッテリーの電圧は極板の構成で決まる一定値なので,バッテリーの容量は言葉通りの容量です。
(その2)乾電池の場合にも言えることですが,電池の放電特性は一度に大電流を流さず小電流にすると取り出し可能な電荷の総量は多くなります。
【容量】=【バッテリーから取り出すことができる電荷の総量】とすると,容量は取り出し方で変わる値になります。
取り出せる電荷の総量が取り出し方に関係するならば,どれ位の時間をかけて電荷を取り出した場合,いくらの電荷が得られるのかをあらわす必要がでてきます。
そこで,容量に取り出す時間の長さ=放電時間を条件に加えて,時間率(時間放電率)に対しての容量という考え方
が必要になり,「○○時間率容量
」という表し方をしているようです。
弱電流でバッテリーを使うときは「時間率」まで気にする必要が無く,容量の単位〔Ah〕と同様に「時間率容量」までは考えが及びませんでした。
・・・内部抵抗の小さな反復使用可能な”巨大乾電池”の感覚は気楽です。
(その3)
バッテリーを完全に放電させると劣化するので,バッテリーの蓄えている電荷の総量=容量としたのでは実用上不便です。そこでバッテリー の電圧が10.5V(放電終止電圧)まで低下するとこれ以上の電荷を取り出さない使い方を基準にして
容量を決めているようです。
実際の使用では10.5Vまでの放電は避け,これより高い電圧で放電を中止した方がバッテリーのためにはよいようです。そばな高原鉄道では11.2Vを切断電圧に設定したコントローラーを使用します。
(まとめ)
バッテリーの容量とは満充電の状態から10.5Vの電圧になるまで,一定電流を定められた時間のあいだ放電し,このときまでに取り出せる電荷の総量(放電容量)をいうらしいことが分かりました。
バッテリーの容量は放電の仕方で変わるだけでなく,充・放電をくり返していると極板が劣化して容量も減ります。容量は1つの目安とするだけで,あまり厳密な値と考えない方がよいのかもしれません。
容量が参考値にすぎなければ電流の使用計画に対して見合う大きさ(容量,時間率)のバッテリーは余裕のあるものにしなければなりません。また,容量の電荷すべてを放電するのではなく一部を放出する使い方をするので,
価格と予定使用電力を見比べながらバッテリーを選びます。
|