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   DD20形 補助機関車 

制御回路

2台のモーターを直列/並列に切換える抵抗制御です。

制御回路の概略

製作する回路は下図のように,ごく簡単な回路です。

速度の切替
スイッチ15を順番に閉じるとモーター回路の電気抵抗が減少し,モーター電流が増加します。(ノッチとの対応はノッチ0=静止〜ノッチ5=最速になります。 )
スイッチ2は2台のモーターの接続を直列=並列に切り換えることでモーターの電流を変えます。(ノッチ1は直列,ノッチ25は並列になります。 )

制動(発電ブレーキ)
スイッチBはモーターを発電機の作用に切り換えます。電気エネルギー変換することで車輪には制動力がはたらきます。この力は高速時には強く,低速時には弱く作用します。(配線図ではスイッチ12の間にスイッチBがありますが,ノッチの順番は下図のようにB-0-1-25の順に並びます。)

前進と後退
スイッチRの開閉でモーター端子の正負が反転します。(スイッチ1を開きモーター停止後,スイッチRを切り換えて界磁に悪影響を及ぼさないようにします。 )

電源
自動車用バッテリーE(12V)を1個使用します。(バッテリーを2個,電圧24Vにすることも考えましたが個人のミニ鉄道では高出力であることより扱いやすさを優先することにしました。)

 

制御器(コントローラー)の設計

電気回路としては最も単純な直接制御(鉄道用語)ですが,模型機関車の制御器の形にまとめるのは簡単ではありません 。
必要な部品を調べ,どのように作ればよいか考えることから始めました。注1

たとえば,モーター電流が10Aを超える条件下で電流の開閉をおこないますので制御器の接点はこれに耐えるものでなければなりません。電子工作に使用するスイッチ程度では電流容量が不足します。10Aを超える電流は発熱も無視できません。

回路の切り換えを行う方法は本物の様なドラム形にするのは製作が困難で,ロータリースイッチがあればよいのですが3回路・4接点(あるいは4回路・3接点)という特殊なスイッチが必要になります。大電流を流せるこの様なロータリースイッチが市販 されているのかどうか知りませんが,もしあったとしてもかなり高額になる筈です。

検討の結果,ドラム形制御器の要素を取り入れ,電流容量の大きいロッカスイッチ(波型スイッチ)を使って接点の問題を解決することにしました。
ロッカスイッチの形と構造から,上図のように円形に並べてキャップを板バネの付いた摺動子で擦りながらロータリースイッチの様にすることができます。これならば多回路・多接点のスイッチでも製作が可能です。

(写真上)
16A 250V AC,双極双投(2回路2接点)のロッカスイッチです。上図@のタイプ(双極双投)を3個,同じ形をしたAのタイプ(単極単投)を3個使用します。

制御器(コントローラー)の製作

コントローラーの本体は空き缶を利用しました。カバーで覆う必要がないので,スイッチの取り付け枠がそのまま本体です。

右写真の様に,直径10cmの缶にロッカスイッチを嵌め込む6個の窓を切り抜き,缶を車台に固定するフラットバーの足を付けました。
(右写真)使用した空き缶は高さが20cm位のもので,適当な高さでカットし上下を半田付けしてあります。

ロッカスイッチを順番に入切する「摺動子」がこの制御器の要(かなめ)の部分です。回転軸の腕に取り付けた板バネがロッカスイッチのキャップを擦りながら回り,順番にキャップを「将棋倒し」させながらスイッチを切り替えます。

(左写真)スイッチの開閉を滑らかに行うために板バネの硬さと形状を微調整します。組立をネジ式にして楽に調整出来るようにしました。

(右写真)ロッカスイッチと「摺動子」を空き缶の枠に取り付けて完成した状態です。
ロッカスイッチのバネと板バネの弾力によってノッチの各段毎に切り替えの感触が手に伝わってきます。

 

抵抗器と電池

抵抗器(ニクロム線)
モーターの特性が不明なので,最終調整は完成後に行うことにし,テスト段階ではモーターにかける電圧を6--12Vの5段階になる様に抵抗器の抵抗値を決めることにしました。

抵抗線は電熱器用のニクロム線を使用し碍子に取り付けます。
ニクロム線は発熱温度によって抵抗値が変わる上,モーター負荷の大小よる電流変化の影響もあるので,ニクロム線の長さ(抵抗値)は実際に走行させた状況を見ながら 調整します。
予備的に抵抗値を概算で求めると,0.9Ωのニクロム線が2本,0.3Ωが1本になります。長めにカットしたものを取り付け,少しずつ切り詰めながら調整します。

(上写真)使用したニクロム線(300W,600W)と碍子,組端子です。

電源
使用する自動車用バッテリーのサイズは記号B(幅129mm×高さ203mm)のものであれば,ターミナルの位置(RまたはL)と長さは限定しません。
記号Bのものは使用車種が多いので種類が多く廉価です。また,バッテリーを2個(=電圧を24V)使用すると手間がかかるので1個搭載にしました。ヒューズは20Aにしました。

 

(注1 抵抗制御と電子制御を比べると古い技術は構造が単純なので製作が容易と思いましたが,直接制御に使う機械的なコントローラーを作るのは大変でした。
楽に作ることを考えれば,必要な部品が市販されており,半田付けが製作の中心で,手間の掛かるハンドル機構を作らなくても「つまみ」を回して制御できる電子回路の方が ずっと簡単かも知れません。
材料手配で感じたのは,世の中は「電子工作万能 の時代」で,この流れに乗らないと著しく製作が困難です。結局は使えそうな廃品まで集めてすべてが手造りになりました。

(注2)住宅の壁面に使われているロッカスイッチから考え付いた制御器ですが,製作後Web検索で「カムスイッチ」 というのを見つけました。製作したスイッチに似ているような気がします。価格が安く,これが使えれば直接制御も手軽に出来るのですが・・・。

製作費 コントローラー(ロッカスイッチ 2550円,フラットバーと金具ネジ類等 約300円) 合計/約2850円,抵抗器と配線用品(ニクロム線,碍子,ビニール線等)合計/約1200円,電源部配線用品(スナップスイッチ,端子台,ヒューズとヒューズホルダー,ビニール線等 )合計/約1900円
合計
(バッテリーを除く製作費総額)5,950円

 

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