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SSシリーズ欧州形 蒸気機関車

 11  車体小物

欧州型古典機の特徴が最も良く表れているのが端バリに取付けられたバッファーとネジ連結器です。装飾的にも面白く機関車の顔の重要な一部になります。
ネジ連結器

日本では自動連結器に統一されているので現在このタイプの連結器は使われていません。明治・大正期の機関車では普通に使われていた連結器です。

右図は端バリ52 に取付けられた連結前の状態で,連結方法は簡単です。まず,連結する相手側のフックAにこちら側のシャックルCを掛けます。 次に,Bと繋がったネジ棒のハンドル棒Dを回して,シャックルCが相手側のフックAを強く引き寄せる状態まで締めます。


連結する際には相手側のフックAを引き寄せて締めつける必要がありますが,この操作 が行えるためにネジ棒に工夫がしてあります。
上図で,ハンドル棒Dの位置を境にネジ棒の上方は
右ネジ下方は左ネジになっています。

したがって,ハンドル棒を下から見て右回転すればBC間の間隔は狭まり,左回転させれば開くことになります。

109 ネジ連結器(部品数/11点)
連結器の製作

上写真のA,B,Cの部品を作ります。部品Dはネジ棒に右ネジと左ネジの加工が必要でこの箇所の加工が済んだ部品を購入しています。

部品Aは真鍮鋳物を削って成形し必要な穴あけをしました。

B,Cは小さな部品ですが一定の強度が必要であり,手元にあった径6mmと3mmの真鍮棒を銀ロウで接合して作ることにしました。

上写真 輪切りにした6mm真鍮棒に穴をあけ,3mm真鍮棒を差し込んで銀ロウ付けが終わったところです。

左写真 接合部分の保持,固定がしっかりしていれば銀ロウ付けも半田付け並に楽に作業がすすみます。アングルの端材を利用した保持金具を作りました。B,Cは似たような大きさ,形なので金具はこれ1つで済みました。
 
●バッファ ー

クローム鍍金された完成品のバッファーです。

図の様に構造は簡単で旋盤加工と銀ロウ付けによって作られています。先端部の形を上手く作ることが出来れば自作も可能です。

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バッファ ー
●グラブハンドル

3mmステンレス棒の両端にネジが切ってあり,キャップと下部金具を取付けて床に立てます。

111
グラブハンドル
簡単に自作もできますが汎用部品と思われる完成品です。
 
●シリンダーカバー

リベット模様を打ち出す都合でやや薄手の0.6mmの真鍮板で作りました。デザインについてはもう一工夫した方が良かったかも知れません。

112シリンダーカバー
リベットを強調しすぎてしまったので,リベットの間隔が狭い感じがします。カバーの取付けは2mmネジで4隅をシリンダーブロック
17に固定するだけにしました。
●ステップ

前部ステップ

厚さ1mmの真鍮アングルに真鍮釘をリベットのように使って踏み板を付けました。少し頭が大き過ぎます。踏み板部分には薄い網目板を半田付けしてあります。

キャブステップ


設計はフランスの軽便鉄道の機関車をモデルにしているとのことで,珍しい形のステップです。
厚さ2mmの真鍮板の踏み板に径4mmのステンレス棒を通して半田付けを試みましたが上手くいきません。そこで,径1mmの真鍮線を押しネジのようにステンレス棒に突き通してから真鍮線と踏み板とを半田付けしています。

サイドタンクステップ

タンクの前面に取付けたステップです。真鍮のアングルと網目板で作り,真鍮釘をリベットのようにして半田付けしました。

113
前部ステップ 114キャブステップ 115サイドタンクステップ
 
●ランプ掛け

取付ける場所に応じて竪型と水平型の2種です。 購入した鋳物部品をヤスリ掛けで整形しました。

116竪型ランプ掛け(煙室頭部取付 ) 右写真

117
水平型ランプ掛け(デッキ前端取付 )左写真
 
番号板


この蒸気機関車は3インチ半ゲージの機関車としては始めての製作なので,迷わず「1号機関車」としました。

文字数が1文字で単純な字形は製作する上では楽ですが,格好の良い番号板にするにはデザインが難しく,板の形は通常よりもずっと縦長にしました。

文字フォントは機関車の年代に合わせてクーリエ,文字の大きさは4枚の番号板(前後左右)とも同じです。ただ,番号板の印象は板の形状によって変わるので取付ける場所によってバランスを見ながら2通りの形になっています。

番号板を作るには金属板を腐食させる方法もありますが,価格と廃棄処理に問題があるので真鍮板の銀ロウ付けで作ることにしました。

国鉄機関車の番号板は砲金鋳物製が多い様なので,これに近い真鍮を材料にし,金切り鋏で簡単に切れる0.4mm厚の板にしました。製作・材料費は銀ロウ代まで入れても4枚全部で100〜150円です。
番号板の製作   118番号板(ナンバープレート)

右写真では大きさが分かりませんが,テレフォンカードよりもひとまわり小さな真鍮板から abc の材料を作りました。

aは数字「1」を切り抜く板です。bは番号板の基板,cは鋏で幅1.5mmに切ったのでカールしていますが,真っ直ぐに伸ばして番号板の「額縁」にします。

文字の切り抜き

薄い板は曲がりやすく,1文字ずつ作るのは大変です。適当な方法はないかと考え,必要な4文字を重ねて作れば簡単な事に気が付きました。

(1) 真鍮板aを4枚重ねて半田付けし,厚さ約2mmの板状のブロックにします。
(2) ブロックのまま,金鋸,グラインダー,ヤスリで大体の形を作りました。
(3) 精密ヤスリで目的の文字の形に細部を削りだしました。
(4) 文字の形が出来上がった後,半田を溶かせば4枚の文字板が完成です。

(1)(2)(3)(4)

文字の貼り付け

文字板と真鍮板bの接合は真鍮板の上に文字板を置き下から加熱して銀ロウを流しました。コテによる半田付けより簡単です。

下左写真/文字の銀ロウ付けが済んだ後部妻板用の番号板です。

「額縁」の貼り付け

細い帯板c も文字板と同様に真鍮板b の周囲に銀ロウ付けしました。高温で幅の狭い薄板を銀ロウ付けするのは大変だったので,一部の番号板の帯板は融点が半分程度の高温半田にきりかえました。

下から炙って「額縁」を接合する作り方は加熱温度が低くて済む場合は作業効率が格段に違います。1枚の「額縁」を銀ロウで付けると1時間程かかりますが,半田使用に変えると15分位になります。

上右写真/ 機関車前面の煙室戸用です。この番号板の裏面には取付用の金具を半田付けするので「額縁」部分も銀ロウ付けです。
●番号板取り付け金具

前面の番号板は煙室扉に取付けるので曲面に合わせた形状の金具を作りました。
それ以外の番号板は4隅に穴をあけ,1.0mmの真鍮釘を車体側まで通して真鍮釘を直接車体に半田付けしました。

通常使われる1.4mmのネジより真鍮釘は頭が目立たず,半田付けはネジより強度があります。

119
煙室扉用番号板取付金具 裏面から見た写真です。4隅の穴は真鍮釘を通して番号板を取付け,2本の2mmネジは煙室扉に固定するのに使います。
 
小物部品の取り付け

ネジ連結器109番号板金具119 の取り付けが終わった車体前部です。

 
余談1製作当初は簡単な工具しか持たずB&Dの木工用電気ドリルとドリルスタンドが唯一の「機械」でした。たとえ機械工具が揃わなくても作りたいからなんとか作ってみようと手作業で始めたライブスチームです。模型は製作を楽しむことが第一と考え,自作であることに特別の価値を認めています。
貧弱な道具で誤差1/10mm以下で機関車を作るためにはそれなりの努力と工夫が必要であり,自分の力で作り上げる経験を積み重ねることは次の模型作りに生きると思っています。
代金を払って購入した部品であれば精度が良く綺麗な仕上がりなのはあたり前の話で,それらを珍重したり有難がる気持ちは有りません。拙くても出来る限り自分の手で作ることが模型作りの本当の楽しさです。

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